徴用工判決の余波

【徴用工判決】

日韓ビジネス関係者「まともな国じゃないということがよく分かった」「国際ルールを守らない国は信用できない」

2018/11/02(金)

第2次世界大戦中に「徴用工として強制労働をさせられた」として韓国人4人が新日鉄住金に損害賠償を求めていた裁判で、韓国の最高裁は10月30日、原告勝訴の高裁判決を確定させた。

日韓両政府が「解決済み」としてきた問題が、一転して蒸し返された格好だ。

「国際ルールを守らない国は信用できない」。

そんな空気が日本企業の間で広がりつつあり、密接な関係にある日韓間のビジネスが打撃を受けるおそれも出てきた。

■政権や国民感情に振り回されるビジネス

1965年の日韓国交正常化に伴い締結された請求権協定で、両国とそれぞれの国民の間で「請求権」の問題は「完全かつ最終的に解決された」と確認。

2005年には、当時の韓国政府も、徴用工問題についても韓国政府が解決の責任を負う、という趣旨の見解を公表していた。

ところが2017年に進歩(革新)系の文在寅政権が発足すると、「歴史認識」で日本に厳しい対応が目立つようになり、今回の司法判断にも影響したとみられる。

この「手のひら返し」に対し30日、さっそく安倍晋三首相は「国際法に照らしてあり得ない判断だ」と記者団に語り、厳しく批判。

経団連と日本商工会議所、経済同友会、日韓経済協会の4団体も「韓国への投資やビジネスを進める上での障害となりかねず、深く憂慮している」とのコメントを共同で出した。

「政権が代わり、国民感情が変わったら、国際ルールさえ通じない事態が起きてしまう。
このままで大丈夫か。日本企業の間でそんな見方が広がれば、韓国関連ビジネスに二の足を踏むようになる可能性があります」

第一生命経済研究所の西浜徹・主席エコノミストはこう見る。

■サムスンなどへの部品輸出は成長エンジン

海を挟んで隣同士の日韓の経済関係は密接だ。

まず貿易。

日本貿易会がまとめた「日本貿易の現状2018」によると、2017年の日本から韓国への輸出額は5兆9780億円。

アメリカ、中国に次ぐ3番目の輸出先だ。

サムスンを始めとする韓国のグローバル電機メーカーなどに供給する半導体製造装置や電子部材などを中心に、輸出額全体の8%を占める。

韓国への輸出額は前年比で19.1%増え、日本全体の輸出額の伸び率(11.8%)を上回るなど、日本の経済成長のエンジンの一つだ。

輸出だけではなく、日本企業による現地の生産拠点などへの直接投資も多い。

日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、日本から韓国への直接投資額は2017年に前年比4.5%増の17億ドル(約1800憶円。国際収支ベース、ネット)。

メーカーではサムスン電子に部材を供給する住友化学、小売りでもミニストップやエービーシー・マートなど多くの日本企業が韓国で事業を展開している。

もう一つ、重要なのが観光客。

日本政府観光局によると、2017年に日本を訪れた韓国人は714万人。

中国に次いで2番目に多かった。

リピーターが多く、韓国でも人気がある日本のドラマのロケ地やアニメゆかりの「聖地」といった、定番の観光地以外の場所へも足を運ぶ人が目立つ。

停滞する国内消費を底上げしてくれる貴重な「お得意さま」だ。

■「まともな国じゃない」反感広がれば日韓とも深刻なダメージ

今回の出来事を受けて、ある日韓ビジネス関係者はこう漏らした。

「韓国がまともな国じゃない、ということがよく分かった」

朝日新聞によると、今回と同様の訴訟は韓国で14件が係争中で、80社ほどが関係している。

今回の確定判決を受け、今後賠償命令が続出したり、新たな訴訟が起こされる可能性もある。

折しもアメリカと中国の貿易戦争が過熱し、世界経済の先行きへの不安感が広がりつつある。

このうえ日韓両国の間で感情的な応酬が激化し、ビジネスへの影響が広がっていけば、双方が深刻なダメージを受けることになりかねない。

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