逮捕の一報に従業員の意外な反応

2018.11.29

逮捕の一報に従業員の意外な反応

仏ルノー工場で聞いてみた「ゴーンのこと、どう思う?」

日本では国民の関心事となっているカルロス・ゴーン逮捕事件。しかし今、フランスを揺るがしているのは別の問題である。

ちょうどゴーン逮捕の数日前、フランス全土で大規模なデモが始まった。

参加者が蛍光色の黄色い安全ベストを着用していることから「黄色いベスト運動」と呼ばれている。

欧州で原油価格の高騰が続くなか、フランス政府が燃料税の引き上げを進めようとしたことに抗議するものだ。

SNSでつながった30万人弱が、全国の交差点(ロータリー)や高速道路を封鎖するという新しい形態のデモだったが、翌週にはシャンゼリゼ通りでのデモが暴徒化。治安部隊と激しく衝突し、破壊行動を起こすなど、まったく別の意味でも大きな事件となった。

もともとこのデモは、SNSを介した草の根運動として、自然発生的に始まった。
そのため政府が交渉相手とすべき労組などの明確な団体が存在せず、事態は長期化している。

各地のデモは落ち着きつつあるが、それでもなお続いており、根本的な問題も解決していない。

新聞やニュースも連日大きく取り上げている。

現在進行形であり、身近な社会問題であり、なおかつ大いに政治問題でもある。

そんななかでのゴーン逮捕のニュースであった。

「よくあることだよ」

速報が流れたその日、「リベラシオン」紙は北部モブージュにあるルノーの工場に赴き、現場のリアルな声を拾っている。

工場から出てきた23歳のジェレミーは、「よくあることだよ」と、ゴーン逮捕の報を耳にしても大して驚かなかった。

「仕事があって給料がもらえていれば、俺は充分だね」

労働組合に加入しているジョナタンという男性は、こう話す。

「上のほうには超富豪がいて、たびたびカネに汚いことをやっている。ゴーンさんが例外なわけないでしょ?」

そして自分のオンボロ車に乗り込みながら、「工場内じゃ、みんなお互いに冗談を言ってるよ。『おまえの裏金はどこに隠してるんだ?』って」と教えてくれた。

彼らの心の根底にあるのは、従業員が日々の暮らしにあえいでいるときにトップは4000万ユーロを隠していたのか──というやるせない思いだろう。

この点は「黄色いベスト運動」に相通ずるものがある。

実際、件のデモにはルノーからの参加者が非常に多いのだ。

ゴーンもマクロンと同じ「カネと権力の亡者」

今のところ、彼らはゴーン問題を直接的に「黄色いベスト運動」と結び付けてはいない。

だが、グループの資金をブラジルなどで私的流用していた件でも告発されていると知ったら、どうであろうか。

39歳のダニエルは、ため息をつく。

「つい先日、ゴーンさんがこの工場にやってきた時は、まさか10日後には日本の拘置所の中だなんて、誰も思わなかったよ。彼は申告すべきものをちゃんと申告していなかった。フランスでも同じことをやっていないと言えますかね?」

カルロス・ゴーンは11月8日、マクロン大統領とともにこのモブージュ工場を訪れたばかりだった。

ダニエルが自分のボスの生身の姿を目にしたのは、その時が初めてだった。

ミシェルという工員も同調する。

「マクロンもゴーンも、カネと権力ばかり。別世界ですよ。あれだけお金をもらっておいてきちんと報告しないなんて、ひどい話だと思う」

一方、擁護する意見もある。トニーとナタリーはこう語る。

「事実が確定するまではゴーンさんの味方です。日産がゴーンを追い出したかったという話もありますから。なんだか対応が少し早すぎますしね。いずれにしても、司法判決を待つべきです」

トニーは、ゴーンの仕事には感謝しているという。

「ゴーンさんは労働者を犠牲にしたとはいえ、やはり経営者として優れているのは事実です」

だが、労組のジェロームは「従業員には、常に作業の完璧さを求めていたくせに」と嘆く。

その点については、擁護派のトニーさえも認めている。

「たしかに模範という意味では、ゴーンさんはトップとは言えませんね」?

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