系譜や家系にこだわる人はパリにはいない

系譜や家系にこだわる人はパリにはいない

鹿島:いや、フランス人全体なら、そういう人もいるんですよ。フランスでは系譜学というのがあって、何代もさかのぼって、何々家と何々家の血がつながっているか否かを研究している人もいる。プルーストの『失われた時を求めて』(※8)に出てくる、売春宿の親父でゲイのジュピアンもそれが趣味でね。ホテルのカウンターに座って、系譜学の研究をしているという人物。そういう系譜や家系にこだわる人は、確かにいます。けれど、パリにはあまりいない。

なぜなんだろうと思ってたけれど、それは、パリで血筋がいいのは王家だけだからだと気づきました。王の家臣や貴族というのは、もともと地方の豪族、つまりそれぞれの国の領主なんです。パリにいる王がこれら地方豪族を集めて造った宮廷が、パリの発祥なんです。領主は管理を家来に託して、宮廷に伺候して王様の家臣になった。

貴族というのは直系家族だし、フランスでも南のほうでは民衆も直系家族。ジェネアロジー(家系)をたどるというのは、彼らにとっては、たとえば「細川家はどこそこの殿様で」というような意味になる。つまり、パリの直系家族で威張っていいのは王の一族だけで、それ以外の封建貴族は全員、地方豪族の末裔。パリは参勤交代のような仮寓(仮住まい)にすぎず、ルーツは地方です。王侯貴族でもルーツがパリといえるのは、王家だけ。王家でなければ、ブルジョワジー(※9)以下ということになってしまう。

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