金正恩氏の喫煙シーン

【北朝鮮】

我慢できなかった?自分でマッチを擦って深く一服…金正恩氏の喫煙シーン

2019/03/05(火)

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は2月26日朝、世界の注目を引き付けながら、約70時間の列車の旅を経て、米朝首脳再会談が行われたベトナムに入った。

半世紀以上前に、列車や飛行機を乗り継いで訪越した祖父の故金日成(キム・イルソン)主席の足跡をたどるかのような“演出”も期待したとみられる。

だが、車窓から見える中国の風景は目に入らず、トランプ米大統領との会談で立ちこめる暗雲を予感していたかもしれない。

中国国境にほど近いベトナム北部ランソン省のドンダン駅。同日午前8時(日本時間同10時)すぎ、緑色に黄色のラインが入った金正恩氏の特別列車がホームに滑り込んできた。

小雨模様の中、ベトナム側は、儀仗兵や朝越両国の小旗を持った市民を並べて歓迎の準備をしたが、金正恩氏はなかなか出てこなかった。

メディアのカメラは、列車到着後の金正恩氏の一部始終を捉えていた。

「黒電話」とも揶揄される独特な髪形の金正恩氏が、目頭を押さえながら疲れた表情を浮かべ、列車の陰に隠れるようにホームでおもむろにタバコを取り出し、自分でマッチを擦って、深く一服した。

妹の金与正(キム・ヨジョン)氏が両手に持った灰皿で吸い殻を受け取った。

金正恩氏は、灰色になったマッチ棒を自分で箱にしまった。

「最高権威」の痕跡を残さないための“習慣”だという。

チェーン・スモーカーで知られ、北朝鮮の公の場所でも灰皿とタバコが欠かせなかった金正恩氏だが、韓国メディアが、健康や行儀作法でその行為を問題視してからは、カメラの前での喫煙は減っていた。

昨年6月のシンガポールでの史上初の米朝首脳会談では、世界中のメディアから追いかけられながらも、喫煙している映像は捉えられることがなく、金正恩氏ウォッチャーから「精神的な圧力によく耐え、人前でタバコに火を付けるのを我慢した」と、感嘆の声が上がったほどだった。

だが今回は、経済制裁解除という「見返り」は得られない見通しの中、フラストレーションが高まっていたのか。

金正恩氏が、飛行機ではなく、鉄道を利用した理由については、祖父の過去をまねて権威付けする狙いがあったとする説明のほか、老朽化した航空機の使用を避けて安全を優先した、との見方もある。

だが、時間がかかる鉄道をあえて利用することで、「移動中」を理由に非核化に向けた米国との実務者協議を滞らせ、自身を「友人」と呼ぶトランプ氏との直談判に持ち込んで、一気に制裁解除を取り付けようという策略が、金正恩氏にはあったとの説もある。

いずれにせよ、米朝首脳再会談は2月28日、不調に終わった。

米国メディアを追い出してまで宿泊したハノイ中心部の高級ホテル「メリア・ハノイ」に戻った金正恩氏は、猛烈な勢いでタバコの煙を吸い込んだかもしれない。

中国は、4000キロ余りの鉄道の道のりを警備して汗をかいたが、習近平国家主席と金正恩氏の会談などは設定せず、北朝鮮と距離を置いた。

23日午後に平壌を出発した特別列車は、北京には寄らず、天津や武漢(湖北省)、長沙(湖南省)、南寧(広西チワン族自治区)などを経由したとみられている。

韓国メディアは、中国が鉄道ダイヤを大幅に変更するなどの最大限の配慮をみせたとして、「中朝の血盟関係(の深さ)を示している」と分析した。

金正恩氏の特別列車は、中国が提供した先頭車両に牽引され、中越国境などの山間部を登坂する際には、より馬力が大きい車両に切り替えられたとも伝えられる。

金正恩氏は昨年6月の初の米朝首脳会談でも、中国が用意したチャーター機でシンガポール入りし、中国による「後ろ盾」を国内外に印象づけた。

ただ、今回のハノイでの米朝首脳会談は、合意に失敗。

いくらトランプ氏がトップ・ダウンを好む指導者だとはいえ、国を支える軍や情報機関などの調整を得ずに、米国という世界一の巨大組織を動かすことは不可能だ。

金正恩氏は、中国と米国のはざまの中で、国際政治に関する「現実」について、多くを学んだことだろう。

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