仙境異聞

仙境異聞

仙境異聞(せんきょういぶん)は、平田篤胤の代表的神道書のひとつ。全2巻。1822年(文政5年)刊行。神仙界を訪れ、呪術を身に付けたという少年寅吉(とらきち)からの聞書きをまとめたものである。別名『寅吉物語(とらきちものがたり)』[1]。

概要

寅吉は7歳のときに杉山僧正にともなわれて、常陸国の岩間山に行き、修行して幽冥界に行き、外国も廻ったと主張し、呪術を操って江戸で評判となった。このことを聞いた篤胤は最初に寅吉を保護していた山崎美成のもとから半ば強引に自分の家に連れてきて数年間住まわせた。篤胤は神仙界に住むものたちの衣食住・祭祀・修行・医療・呪術などについて、くまなく質問をして、その内容をこの本に収めた。 その経緯を篤胤は、以下のように説明している。

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此は吾が同門に、石井篤任と云者あり。初名を高山寅吉と云へるが、七歳の時より幽界に伴はれて、十四歳まで七箇年の間信濃国なる浅間山に鎮まり座る神仙(寅吉の師翁で杉山僧正と名乗る山人)に仕はれたるが、この間に親しく見聞せる事どもを、師の自ずから聞き糺して筆記せられたる物なるが、我古道の学問に考徴すべきこと少なからず、然れど此は容易く神の道を知らざる凡学の徒に示すべきものには非らず。

以前から異境や隠れ里に興味を抱いていた篤胤は、寅吉の話により、幽冥の存在を確信した。篤胤は寅吉を説得して幽冥で寅吉が見た師仙の神姿を絵師に描かせ、以後はその尊図を平田家家宝として祭った[注釈 1] 。

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自己の神学体系に幽冥信仰を導入し、またみずから「幽世(かくりよ)」の実在を信じた篤胤の神秘思想をうかがわせる内容となっている[1]。当時この本は平田家では門外不出の厳禁本であり高弟でも閲覧を許されないとされた。

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